なぜ就職することにしたのか

第一著者の論文持ってて、学会にたくさん行かせてもらって、博士1年の時から学振(DC1)を貰っている僕は、ボスを始めとする周囲から見ればアカデミックの研究者として、最低限食っていけるように見えるようです。ポスドクを何年かやって結果を出せば、旧帝大は無理でも地方の大学でなんとかポストを取れるぐらいに考えているのかもしれません。だから就職活動をしているときは、なぜ就職活動をやっているのか、就職先が決まると就職するなんてもったいない言われました。

修士ぐらいまでは、自分の研究がつまらないと感じたとき「おもしろくしてやろう」と思えたし、どんどん新しい実験をやっていたし、自分の研究を批判する奴は頭が悪いと思っていました。でも博士課程に入った後、いつのまにかモチベーションが下がっていました。自分の研究に自信がなくなり、おもしろいと思えなくなり、面白くしてやろうと思えなくなりました。新しいことはやらなくなり、目の前のことを無難に乗り越えることだけ考えるようになりました。

学振もらっていても所詮月に20万円です。それで毎日12時間ぐらい研究してます、土曜日もたまに登校してます。楽しいから耐えられるのだ。研究がつまらないと思ったら月に20万の給料で今の拘束時間は割に合わない。ポスドクになるともっと割に合わなくなる。月収25万円、ボーナス・家賃補助・交通費なし、労働時間14時間で休みは日曜日のみ。しんどい、疲れた苦しいといいつつ結局は研究が楽しいから、こんなブラック企業真っ青な条件で働けるんだ。ポジションを取った後はポスドク以上に厳しい競争レースが待っている。

僕はいやだと思った。こんな厳しい世界には行きたくないと心底思った。それにアカデミックに残っても自分自身がこれ以上に成長することはないだろう、どんどん腐っていくだろうとも思った。

だから就職活動を必死でやった。
いろいろ難しいことを考えたけど結局アカデミックは、仕事は大変だし、給料安いし、僕は面白い研究できなさそうだし、苦労に見合う見返りがないと思い就活しました。

博士に行ったことは無駄ではなかったと思いますが、行かなくてもよかったとも思います。あと、来年から新しい環境で新しいことに挑戦できることが本当に楽しみです。

博士漂流時代  「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

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